50年前、あの夏休みが私の人生を変えました。
「なぜ二胡を始めたのですか?」
生徒さんから、よくこの質問をいただきます。
今日は、私が二胡と出会った頃の思い出をお話ししたいと思います。
1975年、夏休みの出来事。
1975年の夏休み、私は音楽家である叔父の家で過ごしていました。
叔父の家はいつも音楽があふれていて、従姉妹たちは毎日、ピアノやヴァイオリン、そして二胡の練習をしていました。
私はその演奏を聴くのが大好きでした。
ピアノも美しい。
ヴァイオリンも素晴らしい。
でも、私の心を一番惹きつけたのは、二胡でした。
「二胡って、こんな音が出せるんだ!」
特に印象に残っているのは、お姉さんが二胡を練習している姿でした。
練習していたのは、中国の名曲「賽馬(サイマ)」や「新農村」などです。
その演奏を聴いて、私は驚きました。
二胡はただメロディーを弾くだけの楽器ではありませんでした。
まるで人が話しているようなニュアンス。
小鳥がさえずるような音。
馬が駆け抜ける迫力ある音。
一本の楽器から、こんなにもさまざまな音や情景を表現できることに、大きな感動を覚えました。
その瞬間、
「私も二胡を習いたい!」
そう強く思ったことを、今でもはっきり覚えています。
初めてのレッスンは「座り方」からでした。
ようやく始まった最初のレッスン。
私はすぐに曲を弾けると思っていました。
しかし、最初に教えてもらったのは、演奏ではありませんでした。
まずは、
正しい座り方
そして、
正しい構え方
でした。
椅子の座り方
椅子には深く腰掛けず、およそ3分の2ほどの位置に座ります。
太ももと床がほぼ平行になる高さの椅子を使います。
深く座ると骨盤が後ろへ倒れやすくなり、猫背の原因になるためです。
さらに、
背筋を自然に伸ばし、
肩の力を抜き、
両足裏をしっかり床につけます。
今では当たり前に感じることですが、当時の私にはとても難しく感じました。
座り方ができるようになると、次は二胡を構えます。
二胡を構えることさえも簡単ではありませんでした。
左肘は身体から自然に約45度に開きます。
二胡の胴は左太ももの付け根(鼠径部付近)に乗せます。
しかし、当時の私はまだ子どもでした。
足も小さく、二胡を安定して支えることができませんでした。
二胡は何度も動いてしまい、思うように構えられません。
さらに、
左手は棹を強く握るのではなく、虎口(親指と人差し指の間)で軽く支えるように教わりました。
ところが、子どもの小さな手では、その形を作ることも簡単ではありませんでした。
一回目のレッスンで、とても疲れたことを覚えています。
まだ一音も弾いていません。
それでも、
正しい座り方。
正しい構え方。
その姿勢を保つだけで、本当に疲れてしまいました。
「二胡って、こんなに難しいんだ。」
子どもながらにそう思ったことを、今でもよく覚えています。
しかし、今振り返ると、その基礎があったからこそ、今日まで50年以上二胡を続けることができたのだと思います。

第一回目のレッスン
今、初心者の皆さんへ伝えたいこと。
私は12歳で二胡を始め、中国四川音楽学院民族音楽学部二胡専攻で学びました。
そして50年以上にわたり二胡を演奏し、30年以上にわたって教育・指導を続けてきました。
これまで40名以上の日本人講師を育成し、1,000名以上の生徒さんを指導してきましたが、上達の早い方には共通点があります。
最初の基礎を大切にしていることです。
座り方。
構え方。
運弓。
音程。
これらは一見地味な練習ですが、美しい音色を奏でるための土台になります。
私自身も、最初は座ることや構えることに苦労しました。
だからこそ、初心者の皆さんの気持ちがよく分かります。
焦る必要はありません。
一歩ずつ積み重ねていけば、必ず美しい音色を奏でられるようになります。
まとめ
1975年の夏休み。
叔父の家で初めて聴いた二胡の音色が、私の人生を大きく変えました。
あの日、「二胡を習いたい」と思った気持ちは、50年経った今でも変わることはありません。
これからも私は、二胡の原点を大切にし、人の声のような美しい音色を未来へ伝えていきたいと思っています。
