地元民族楽団の二胡ソリストとの出会い

目次

私の人生を変えた最初の先生

前回の記事では、50年前の夏休みに二胡と出会い、「二胡を習いたい」と強く思ったところまでお話ししました。

しかし、当時の中国では、今のように気軽に二胡教室へ通える環境はありませんでした。

二胡を習うためには、まず二つの大きな問題がありました。

一つ目の問題は「楽器」

当時、私の家には二胡がありませんでした。

どうすれば二胡を手に入れられるのか。

父は文化会館に勤めていましたので、相談したところ、文化会館で使われていない二胡を借りられることになりました。

これで、ようやく楽器の問題が解決しました。

子どもだった私にとって、自分専用ではありませんでしたが、初めて手にした二胡は宝物のように感じました。

二つ目の問題は「先生」

次は、誰に教えていただくかです。

母の知り合いの妹さんが、地元民族楽団の二胡ソリストとして活躍されていることが分かりました。

その方にお願いして、私に二胡を教えてくださることになったのです。

当時の中国は、まだ文化大革命の時代でした。

そのため、今のように月謝を支払ってレッスンを受けるという文化はほとんどありませんでした。

知人や友人からの紹介で教えていただくことが一般的で、多くは善意によるものでした。

私は、自分がずっと願っていた「二胡を習う」という夢が叶い、本当にうれしかったことを今でも鮮明に覚えています。

 

初めての二胡レッスン

レッスン当日。

私は緊張のあまり、約束の時間より30分も早く先生のお宅へ着いてしまいました。

今思えば、早く着きすぎですね(笑)。

それほど楽しみでもあり、不安でもありました。

袁(えん)先生は、四川音楽学院民族音楽学部二胡専攻をご卒業された正統派二胡奏者で、とても優しく穏やかな先生でした。

その出会いが、私の人生を大きく変えることになります。

基礎から始まったレッスン

初めてのレッスンでは、いきなり曲を弾くことはありませんでした。

まず教えていただいたのは、二胡を演奏するための基本です。

– 正しい座り方・構え方
– 弓の持ち方
– 正しい運弓の方法
– 外弦・内弦の開放弦の運弓練習

今、SOBOKU二胡スクールで私が初心者の方へ最初にお伝えしている内容と、ほとんど同じです。

「良い音は基礎から生まれる。」

この考え方は、50年前から変わっていません。

ノイズだらけのスタート

しかし、実際に弾いてみると……

緊張のせいもあり、

弓は震え、

音はかすれ、

ノイズだらけでした。

思うように音が出ず、

「二胡はこんなに難しい楽器なのか。」

と初めて実感しました。

あっという間に1時間のレッスンが終わりました。

先生から出された宿題は、とてもシンプルでした。

「ノイズのない、美しい音で運弓できるようになること。」

それだけでした。

 

見て学ぶレッスン

袁先生のレッスンは、現在のように細かく理論を説明するスタイルではありませんでした。

当時の中国の芸能界では、「口伝心授(こうでんしんじゅ)」という教え方が一般的でした。

先生が模範演奏を行い、生徒はその演奏を見て、考え、研究しながら技術を身につけていきます。

私も先生の演奏を何度も観察し、その動きを真似しながら、一つひとつ覚えていきました。

子どもだった私にとって、この教え方はとても自然だったように思います。

 

一方、日本で長年レッスンを続ける中で、私は一つのことに気づきました。

大人になってから二胡を始める方は、

「なぜそのように弾くのか。」

「どうしてその動きをするのか。」

を理解してから練習した方が、上達が早いということです。

もちろん、模範演奏を見ることはとても大切です。

しかし、それだけでは大人の初心者の方には伝わりにくいこともあります。

私は、日本で数多くの初心者の方を指導する中で、

「模範演奏」と「分かりやすい言葉による説明」の両方が必要だ。

という結論にたどり着きました。

だから現在のSOBOKU二胡スクールでは、

– 理由を理解していただく説明
– 正しい模範演奏
– 実際に一緒に練習する

この三つを大切にしたレッスンを行っています。

この指導方法は、私が中国で学んだ経験と、日本で30年以上大人初心者を指導してきた経験、その両方から生まれたものです。

 

毎日4時間の練習

私は誰かに言われて二胡を始めたのではありません。

自分から「習いたい」と願って始めた二胡でした。

だからこそ、練習は苦ではありませんでした。

学校から帰ると、すぐに二胡を手に取りました。

レッスンは週1回、月4回。

先生に褒めてもらいたい。

もっと上手になりたい。

その一心で、私は毎日最低4時間の練習を続けました。

子どもだった私にとって、その時間は決して長く感じませんでした。

二胡を弾いている時間が、何よりも楽しかったのです。

あの時の基礎が、今の私の原点

今、私は初心者の方に、

– 座り方
– 構え方
– 弓の持ち方
– 運弓

を最も大切にお伝えしています。

その理由は、とてもシンプルです。

私自身が、その基礎を徹底的に教わってきたからです。

50年前に袁先生から教えていただいた基礎は、今でも私の演奏と指導の土台になっています。

先生との出会いがなければ、今の私はありません。

心から感謝しています。

次回予告

第3話|14歳、二胡奏者として初めて舞台へ

― 演奏活動が私を大きく成長させた

14歳になった私は、二胡奏者としてさまざまな舞台で演奏活動を始めました。

舞台に立つたびに学んだこと、演奏家として成長できた経験、そして現在の演奏や指導につながる大切な学びについてお話ししたいと思います。

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この記事を書いた人

二胡演奏歴50年以上。
二胡製作研究家。
高級二胡専門店 名師堂代表。
SOBOKU二胡スクール代表。

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